2019年11月に運行を休止し、2023年12月に正式に廃止された上野動物園モノレール。廃止直前の12月2日に、その様子を確認してきました。
また、2019年の記事と併せて全橋脚の撮影が完了しました。順に掲載していきます。
訪問日 | 2023年12月2日 土曜日 |
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上野懸垂線の特徴
国内ではほかに湘南モノレール・千葉都市モノレールが懸垂式(サフェージュ式)を採用していますが、上野懸垂線が採用している「上野懸垂式」は、それとは異なる独自の方式です。
ランゲン式と呼ばれる方式のモノレールを日本でアレンジし、鉄輪をゴムタイヤに置き換えたのが特徴です。
その車体支持方式は国内では現状唯一無二のものであり、その規格に合わせた車両を新造しようとするととんでもない金額がかかってしまうことから、老朽化した40型車両の更新を諦め、休止ののち廃止されたという経緯があります。
そんな独特な方式ですから、当然軌道も橋脚も湘南・千葉のものとはまったく異なる特殊な形態となっています。
東園駅
駅舎の様子。駅前にはキッチンカーが停められており、全体を拝むことはできませんでした。
各種看板や装飾は概ね現役当時のまま残されています。
門は柵で塞がれ、「休止中」の張り紙がされています。
外壁に取り付けられている各種掲示物です。
車両の紹介ボードでは、40形の「現在運行中!!」と書かれていた部分がテープによって隠されています。
改札前の整列場も当時の状態に近く、時刻表などが張り出されたままになっています。
柱には「休止中」の張り紙が。
ベビーカーに関する案内板と時刻表。
券売機があった場所はボードで塞がれていました。
運賃や注意点などを掲示する案内板はそのままです。
国内唯一のモノレールの構内踏切です。チェーンで入口を塞がれ、落ち葉が清掃されていない点に寂しさを覚えます。
踏切脇には、ベビーカーに関する案内と、のりばの案内だけが残されていました。(2019年10月訪問時は他にも掲示物が貼られていました)
車両の様子。さよなら装飾が付いたままになっています。4年以上放置されているだけあって、かなり埃を被っていました。
軌道上には覆いのような設備があります。恐らくここに台車周りの点検をするための足場があるのではないかと踏んでいるのですが、実際のところはどうなのでしょうか。
軌道設備・橋脚
塗装関連の表記に倣い、橋脚はP〇番、走行桁はG〇番と記述します。
P1~P5橋脚
P1橋脚です。2019年10月訪問時は工事用仮囲いに覆われて姿を見ることができませんでしたが、今回は囲いが無かったため拝むことができました。
※異なる位置で撮った3枚の写真を合成しています
木々に覆われて見えにくいですが、車止めです。
P2橋脚。駅構内に存在します。非常口付近から辛うじて見ることができました。
P3・P4橋脚についてはそれぞれ留置車両の後ろ・木々の後ろにあり見ることができませんでした。2019年10月の記事には当時の写真が載っていますので、併せてご覧ください。
駅を出てすぐのところにあるG3走行桁。柵のようなものが付属しています。
トイレの西側にあるG5走行桁。こちらは柵が付いていません。
P5橋脚。色褪せた「Ishikawajima」のプレートが付いています。
P6~P10橋脚
P6橋脚。この橋脚を境に西側は2017年に軌道の塗り直しが行われており、軌道の色が変わっています。
G6走行桁。
P7橋脚。排水用と思われるパイプが側面を這っています。
ちょっと無理がありますがG7走行桁です。
P8橋脚。比較的状態がいいように見えます。
G8走行桁。カメラを高く持ち上げて走行路上面が写らないか試してみましたが、ギリギリ写らず…
しかし、上面がある程度凹んでいること、(おそらく排水用の)穴がたくさん設けられていることが分かりました。
P9橋脚。この付近は地面が近く、橋脚の背が低めになります。
P10橋脚。2019年10月訪問時にうっかり撮り忘れていた橋脚です。
P11~15橋脚
P11橋脚。コンクリ壁に隠れて殆ど見えませんが辛うじて一部が見られます。
G11走行桁。珍しく障害物が少ない区間で、桁を観察しやすくなっています。
P12橋脚。排水用と思しきパイプがあります。軌道との接合部から木の芽が生えています。
P13橋脚。道路脇に生えています。
G13走行桁。公道を跨ぐ部分です。
P14橋脚。「Ishikawajima」プレート付きです。
P15橋脚。
半分ほどしか写っていませんがG15走行桁です。
P16~20橋脚
P16橋脚。ここからP19までの橋脚は下部を黒い柵に覆われており、全体を見ることができません。
この黒い柵、2019年10月訪問時にはなかったものですが、新設(移転)された「パンダのもり」が既定の場所以外から覗き見されることを防ぐために取り付けられたのではないかと思われます。
G16走行桁。錆垂れが目立ちます。
P17橋脚。「Ishikawajima」の銘板が上塗りされて読めなくなってしまっています。
G17走行桁。
P18橋脚。
G18走行桁。綺麗な直線です。
P19橋脚。例によってパイプが這っています。
G19走行桁。
P20橋脚。P17と同じく「Ishikawajima」のプレートが上塗りされていますが、光の加減でうっすらと文字を読むことができます。
G20走行桁。これ以降は西園駅構内です。
P21~P23橋脚
P21橋脚。西園駅駅舎の中にあり、ホーム階を貫通しています。
P22橋脚。P10と同じく2019年10月訪問時には撮り忘れていた橋脚です。1階部分には樹木?のように見せるカムフラージュが行われています。
P23橋脚。2019年訪問時は工事用仮囲いがあってあまり詳しく観察することができませんでしたが、今回はそれがなく色々な角度から撮影できました。
西園駅
駅舎外観は休止当時のままです。
門自体は開かれていますが、その先が柵によって塞がれています。やはり「休止中」の張り紙あり。
門の左側には記念写真コーナーが設けられていました。
券売機があった個所は竹林が描かれたカーテンで隠されています。東園駅同様、掲示物は概ねそのまま残されています。
右手のエレベーター付近は雑多な物置と化していました。
変電所・作業用ゴンドラ
駅脇にある「西園変電所」。フェンスで囲われています。
P23橋脚付近に停められている作業用ゴンドラ。銀色の簡素な設計です。
エンジンが積まれているようです。定員は見た感じ1~2人程度でしょうか?
塗装表記文字起こし
おまけ(?)として、軌道に描かれていた塗装表記を文字起こししておきます。
【P3橋脚】
塗装年月 平成13年3月23日
塗装会社 石川島播磨重工業株式会社
塗料製造会社 日本ペイント株式会社
塗装面積 P1~P23
外面 1948㎡
仕様 下塗 変性エポキシ樹脂
中塗 ポリウレタン樹脂
上塗 ポリウレタン樹脂
【P6橋脚】
塗装年月 2017年12月
発注者 東京都交通局
請負者 北原工業株式会社
施工箇所 走行桁G6~G8 鉄支柱P7・P8
塗料製造会社 関西ペイント株式会社
塗装面積 走行桁154.5㎡ 鉄支柱43㎡
塗料材料 下塗 弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料(2回塗)
中塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 中塗(1回塗)
上塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 上塗(1回塗)
上塗色彩 走行桁J65-70L 鉄支柱J25-75B
(備考:ここのみ塗料材質ではなく塗料材料と書かれていました)
【P9橋脚】
塗装年月 2016年12月
発注者 東京都交通局
請負者 北原工業株式会社
施工箇所 走行桁G9~G10
塗料製造会社 関西ペイント株式会社
塗装面積 139㎡
塗料材質 下塗 弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料(2回塗)
中塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 中塗(1回塗)
上塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 上塗(1回塗)
上塗色彩 F65-70L
【P11橋脚】
塗装年月 2016年12月
発注者 東京都交通局
請負者 北原工業株式会社
施工箇所 走行桁G9~G10
塗料製造会社 関西ペイント株式会社
塗装面積 139㎡
塗料材質 下塗 弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料(2回塗)
中塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 中塗(1回塗)
上塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 上塗(1回塗)
上塗色彩 H65-70L
【P14橋脚】
塗装年月 2015年12月15日
発注者 東京都交通局
請負者 株式会社カメヤ堀越
施工箇所 走行桁 G13~G15 橋脚 G14・G15
塗料製造会社 日本ペイント株式会社
塗装面積 走行桁143.4㎡ 鉄支柱63.2㎡
塗料材質 下塗 弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料(2回塗)
中塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 中塗(1回塗)
上塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 上塗(1回塗)
上塗色彩 走行桁部 H65-70L 橋脚部 H25 75B
【P24橋脚】
塗装年月 2012年12月
発注者 東京都交通局
請負者 北原工業株式会社
施工箇所 走行桁 G20~G22
塗料製造会社 関西ペイント株式会社
塗装面積 142.8㎡
塗料材質 下塗 弱溶剤変性エポキシ樹脂塗料(2回塗)
中塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 中塗(1回塗)
上塗 弱溶剤ふっ素樹脂塗料 上塗(1回塗)
上塗色彩 F65-70L