比叡山鉄道・坂本ケーブルの全4駅を下車してきました。
起終点となるケーブル坂本・ケーブル延暦寺駅は、登録有形文化財に登録されている歴史上価値の高い駅舎が特徴。
中間に設けられているほうらい丘・もたて山駅は、事前申告がなければ全列車が通過してしまう無人駅です、周囲に建物などは殆どなく、"秘境駅" の一つとして知られています。
坂本ケーブル撮影記事はこちら
訪問日 | 2020年1月5日 日曜日 |
---|
ケーブル坂本駅
駅舎
まずは麓の玄関口であるケーブル坂本駅へ。
大正14年の開業時から使われている、木造2階建てのかわいらしい駅舎。
構内
駅舎内部は緑と白で塗分けられており、小型のシャンデリアや木製チラシスタンドなどと相まってお洒落な雰囲気に。
ホーム側から見た駅舎の様子。
1面2線ですが、この時は改札口側のホームだけが使われていました。
ホームは緩やかな階段状。上屋の柱部分が簀子のような部材で装飾されています。
オレンジ色の剛体架線が設置されており、車両の停車中に車内用電源の充電が行われます。
ほうらい丘駅
ホーム
お次は隣のほうらい丘駅へ。木々に囲まれており、木漏れ日が映えます。
延暦寺側は駅を出てすぐトンネルに入る形になります。
ホーム入口には緩い階段があります。オレンジ色の手すり付き。
各種設備
前述の通り通常は全列車が通過となるため、この駅から乗車を希望する場合は、こちらのインターホンで連絡する必要があります。
駅名標。駅周辺にある地蔵尊(後述)の解説文が添えられています。
駅掲示の時刻表・運賃表です。
途中下車制度についても記載されています。
架線柱の撤去跡を使い、木彫りの犬…?の像が飾られていました。この駅以外にも沿線各所で見られる遊び心です。
蓬莱丘地蔵尊
駅のすぐ隣には霊窟があります。
中には多数のお地蔵様が並んでいます。
これらの地蔵群は、全て坂本ケーブルの建設工事中に発掘されたもの。
かつての織田信長による比叡山焼き討ちの際、犠牲になった人たちの霊を慰めるために作られたものと言われています。
大勢の人が訪れるスポットではないものの、解説板が用意されており、洞窟内には照明も設けられています。きちんと整備の手が入っている様子。
これと関連があるのかは分かりませんが、駅前道路(?)の脇にもお地蔵様を模したような形の石が並べられていました。
余談 (中間駅位置のはなし)
余談ですが、僕がこの後延暦寺行きに乗った際、反対の坂本行きのケーブルカーでほうらい丘駅を訪れた方がいたようで、乗車中の延暦寺行きはこの位置で一時的に機外停止しました。
交走式ケーブルカーはつるべ井戸のようなものですから、片方の車両が駅に停まっている間、もう片方の車両も駅に停まれるよう、中間地点から見て対になる位置に中間駅を作るケースが主流です*1。
しかし、この路線ではほうらい丘・もたて山両駅の起終点からの距離が微妙に違うため、片方の車両が駅に停車している場合は、もう片方の車両が駅間の線路上で機外停止することになります。
もたて山駅
ホーム・待合室
2つ目の中間駅、もたて山駅へ。
長い方のトンネルを抜けたところから天気は雪に変わり、駅とその周辺は薄く雪を被っていました。
坂本駅の駅員さん曰く、このシーズンに雪がこんなに積もったのはこの日が初めてだったそう。
無人駅ですが、小さな屋根付きの待合室があります。かわいらしい。
ホームはほうらい丘とは異なりかなり角度がついていて、滑り止め用の角材が打ち付けられています。
この駅の延暦寺側では、駅を出てすぐ鉄橋に差し掛かります。
ほうらい丘駅は駅を出てすぐトンネルでしたので、この辺りも対になっている感じがして面白いものです。
この写真はこのポイントで撮影したものです。
各種設備
壁面には例によって連絡用インターホンが設置されています。
屋根板裏に竹ぼうきが仕舞われていました。
駅名標です。紀貫之墓に関する説明文が添えられていますが、
駅前・紀貫之墓
案内板にある通り、この駅は土佐日記作者・紀貫之のお墓の最寄り駅です。
しかしながら、駅前道路(!)は完全に登山道のような状態になっており、雪降る中の軽装備で500mを歩くのは無謀と思い、今回は訪問を省略しました…
駅前にあった観光案内図。時間の経過とともに地面が若干ズレ動いているようで、脚が歪んでいました。
ケーブル延暦寺駅
駅舎
この路線の終点であるケーブル延暦寺駅へ。
駅舎は鉄筋コンクリートの2階建て。
縦長の窓が並ぶ様や、腕木庇の細かい装飾、1階部分下半分の塗分けなどが、坂本駅と共通の意匠です。
ゴツゴツとした壁が明るい黄色で塗られており、角型コンクリ造りの重厚な雰囲気が和らげられています。おしゃれ。
駅舎はケーブル坂本駅と同じく開業時からのもので、登録有形文化財に登録済み。
降車ホームに面した出口。この時は使用されていませんでした。
駅構内
改札口・窓口付近の様子。かつてはこの細長い窓から乗車券を販売していたのでしょう。
駅舎の一部がホームに覆いかぶさるような形になっています。ケーブルカーの山上駅では散見されるタイプ。
この駅でも剛体架線を使って蓄電池の充電が行われます。
*1:箱根登山鉄道鋼索線・近鉄生駒鋼索線・大山鋼索線。そもそも中間駅のあるケーブルカーというのがレアケースでもあります